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相続税の基本①-法定相続人について―

相続税は消費税や所得税などと違い、なかなか普段生活の中で目にする機会もありません。

そのせいか、基本的なことも意外に一般的には知られていないように思います。

自分には関係ないと思い込んでいる方と、闇雲に恐れている方の両極に二分しているようにも感じます。また、間違った知識をお持ちの方も多いようです。

 

今回からは、相続税の基本についていくつかお話したいと思います。相続人とは誰か、どのくらいの財産からかかってくるのか、正しく知ることにより、必要のない不安を取り除き、本当に必要な対策を考えることができると思います。

 

1回目は最も基本的なこと、「法定相続人」についてお話します。

 

「法定相続人」とは、文字通り法で定められた相続人、すなわち遺産がもらえる人ということになります。

これは、必ずしも故人の近くにいた家族とは限らないところが厄介なところです。相続が発生したとたん、見ず知らずの相続人が登場してくる、というのは珍しいことではありません。また、存命の時に絶縁していた場合でも、相続が発生すると関係なくなります。

 

詳しく見ていきましょう。

 

まず初めに、「配偶者」は必ず相続人になります。

配偶者以外の相続人には3段階の順位があり、上の順位の人が1人でもいる場合は下の順位の人は相続人にはなれません。その順位にあたる人物が1人もいない場合のみ、下順位に繰り下がります。

 

第1順位:子および代襲相続人

※代襲相続人とは、既に亡くなっている子の子(すなわち孫)になります。亡くなった子に複数の子供がいる場合は、その全員が代襲相続人です。同じ孫でも親(被相続人の子)が存命であれば相続人ではありません。

※既に亡くなっている子の子も亡くなっていて、さらにそこに子供がいた場合は、その曾孫が相続人となります。

※前妻との間の子、及び婚外の子も認知していれば相続人になります。

 

第2順位:両親等の直系尊属

※両親ともに存命ならば2人とも、片方であれば1人が相続人になります。両親ともに他界していて祖父母が存命の場合は、祖父母が相続人となります。

 

第3順位:兄弟姉妹および代襲相続人

※代襲相続人とは兄弟姉妹の子(すなわち甥、姪)になります。こちらは第1順位の代襲相続人と異なり、一代限りです。すなわち、代襲相続人の甥又は姪が他界している場合は、その子供に相続権はありません。

 

配偶者と、最高順位の親族が、それぞれ以下の割合で遺産を相続します。

配偶者:第1順位・・・1/2ずつ

配偶者:第2順位・・・2/3:1/3

配偶者:第3順位・・・3/4:1/4

同じ順位に属する複数の相続人は、その取り分をさらに均等に分けます。

第3順位以上の親族がいない場合は配偶者がすべて相続します。

配偶者がいない場合は、該当する順位の親族がすべて相続します。

※どちらもいない場合で、遺言書がない場合は国庫に帰属します。

 

法定相続分は法的な決まりではありますが、必ずしもこのとおりにする必要はありません。遺言書を遺して故人の遺志を伝えても良いし、相続人全員で話し合って決めることができます。詳しくは以前のコラム「遺産、どう分けたらいい?」の①~③をお読みください。

 

一例として、親も兄弟も既に他界していて、家族は妻1人だけの被相続人のケースを挙げてみます。

財産は住んでいる家と土地だけで、相続税の課税対象額に満たないため、相続税の申告は不要でした。妻は当然そこを相続し、住まいさえ確保されていればこれからなんとかなると思い込んでいました。

ところが、亡くなった兄弟の子供が突然現れて、取り分をきっちり欲しいと言ってきました。不動産以外の財産は全くないので、土地と家を売って現金化し、アパートに住むことになってしまいました。

法定相続人の権利は、相続税の申告が不要な場合でも関係ないのです。

この場合、遺言書があれば、住み慣れた家を手放さずに済んだかもしれません。

 

相続の知識がないと、いざ相続が発生してしまってから後悔することがたくさんあります。

そうならないためにも、生前のうちに知識をつけて、ある程度対策を考えておくことが有効です。

 

次回は相続税がどのようにかかってくるのかについてお話します。