税務トピックス

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遺言書の必要性を痛感した相続の事例

前回、遺言書の作成についてお話ししました。

その中で、遺言書を作成した方が良いと考えられるケースとしたうち
・独身で子供もおらず、両親、兄弟姉妹(又は甥姪)もいない(法定相続人がいない)
・内縁の配偶者がいる
上記両方の条件が重なっていた事例を、今回ご紹介させていただきます。

被相続人のF様は、有名な芸能関係の方でした。
当事務所とは確定申告を通じて長いお付き合いでしたが、芸能関係という特殊な職業でしたので、プライベートなことには深く踏み込むことなく、毎年の申告業務をご依頼いただいておりました。
比較的ご高齢ではありましたが、直前まで元気にTV出演もされていて、当時体調を崩して入院していたものの、ご自宅をリフォームして退院準備をしていた状況でした。
ですが、急変してしまい・・・

そして、相続税申告のご依頼をいただき必要書類を集めたところで発覚した事実・・・
それがこの2つの条件でした。
・独身で子供もおらず、両親、兄弟姉妹(又は甥姪)もいない(法定相続人がいない)
・内縁の配偶者がいる

ちなみに、相続手続きのご依頼は内縁関係の女性からのものでした。
この女性は、毎年のF様の確定申告書類を整理して届けてくださっていました。
ですが・・・内縁関係ということを完全に隠していらっしゃり、この事実を知っている人が誰もいない状況だったのです。

前回もお話しした通り、内縁の配偶者には相続権がありません。
F様自身、亡くなるということを全く考えていなかったらしく、遺言書もありませんでした。

さて、そこからが大変でした。

相続人が居ない場合、選任された相続財産清算人が、被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。
その際に、特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もありますが、この時は内縁関係であったことを証明するものが本当に何も無く、特別縁故者として認めてもらうことが非常に困難でした。

そして結果的に、手続き終了までに7年という年月がかかり、内縁の女性に渡った財産はほんの僅かで、ほとんどが国のものになってしまいました。

唯一、全額が内縁関係の女性に支払われたのが、加入していた小規模共済の共済金でした。
請求書類の作成について、当社でも色々とお手伝いさせていただき、全額が内縁関係の女性へ支給されることが決定した時には非常に感謝していただきました。

長年一緒に過ごしていても、内縁関係だと基本的に相続の権利はありません。
残された者を想う気持ちがあるなら、籍を入れておいてくれれば・・・
せめて、遺言書を残してくれていれば・・・
それを痛感した出来事でした。

遺言書は何度でも書き直しができます。
一度ご自身の財産を把握する意味でも、真剣に遺言書を考えてみてはいかがでしょうか。

評価が難しい土地などについて精査し相続税を試算したうえで、遺言書についてのアドバイスをさせていただくことも可能です。

ぜひ一度、お気軽にご相談ください。