税務トピックス
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多額の贈与が可能な相続時精算課税制度は注意が必要です!
いよいよ2019年も残りわずかとなりました。こちらのページも今回の記事が今年は最後になります。来年以降もコンスタントに更新することを心がけますので、今後も宜しくお願いいたします。
今年最後の記事は贈与税についてです。年末年始になる普段中々会わない両親や祖父母、子供や孫が顔を合わせる機会もあるのではないでしょうか?そのときに贈与の話がでることがあるかもしれません。
生前贈与の基本は「暦年課税」になります。これは簡単にいうと1/1~12/31までの1年間で110万円以下の贈与であれば贈与税がかかりません。リスクが全く無いという訳ではないですが、110万円以下であれば贈与税がかかりませんし、手間も大きくかかるというわけではありません。
今回お伝えする「相続時精算課税制度」ですが、金額としては複数年にわたって合計2,500万円までの贈与であれば贈与税がかかりません。「暦年課税」と比べて非課税になる金額が大きく魅力的に感じる「相続時精算課税制度」ですが、必ずしも良いことばかりではありません。
「相続時精算課税制度」の概要をお伝えします。
「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において「選択」できる贈与税の制度です。
税額の計算ですが、「贈与税」については、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を利用している場合は、残額が限度となります)を控除した後の金額に一律20%の税率を乗じて算出します。
例えば、祖父が孫に平成31年1/1~令和1年12/31までに2,500万円分の贈与した場合、この期間に係る贈与税は0円です。(この時点で特別控除の枠である2,500万円はフルに使っています)翌年以降贈与があった場合、今回の場合、前年以前に特別控除の枠を使い切っているので、贈与をした金額に対して一律20%の贈与税が課されます。仮に平成31年1/1~令和1年12/31までの贈与が1,000万円だった場合、この期間に係る贈与税は0円です。(特別控除の枠のうち1,000万円分を使います)翌年2,000万円分の贈与税があった場合は2,000万円ー1,500万円(特別控除枠2,500万円ー前年以前使用の特別控除1,000万円)×20%で贈与税が計算されます。言い換えれば2,500万円までであれば複数年にわたり贈与税は発生しないということになるのですが・・・。
「相続時精算課税制度」は上記にある通り適用するためには「選択」することになります。そして、この制度を選択すると、その選択した年分以降全てこの制度が適用され「暦年課税」へ変更することができません。ようは一度選択したら後戻りはできないという事です。
また、税額の計算ですが、「相続税」を計算するには注意が必要です。贈与を行った者が亡くなった場合、その贈与財産の価額を相続財産の価額に合算して相続税を計算することになります。(納付した贈与税額については相続税額から控除)例えば、財産1億円の祖父がいたとします。相続時精算課税制度を選択して、亡くなるまでに2,000万円の贈与を行っていました。その結果、相続時の相続財産は8,000万円に減少していたとします。この8,000万円をベースに相続税が計算されるのではなく、贈与財産である2,000万円が合算されて相続税が計算されます。今まで贈与を受けた分が、相続財産に上乗せされることで、確かに贈与税は一定のラインまで非課税になりますが、結局のところ相続税で課税されるので、上記の例だと直接的に節税に繋がるという制度ではありません。では、この制度はどんな場面でも節税に繋がらないかというとそうではありません。有効な手段として選択される場面ももちろんあります。詳細は改めてお話しできれば幸いです。
今回の記事は以上です。
冒頭にもお伝えした通り、今年の記事はこれが最後になります。来年以降も皆様のお役に立つような記事の作成に努めていきたいと思いますので、今後も宜しくお願いいたします。