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「いらない土地」だけを相続放棄できない?

親の相続が発生したときに、相続財産に見知らぬ土地が突然出てくることがあります。

相続人は誰一人その存在を知らず、遠方のためなかなか確認しに行くことすらできない。

調べてみるとかなり不便な場所で、利用価値などほとんどない。

所有していた親は、誰にも相談することもできずに固定資産税だけを密かに支払っていた…

昔バブルの時代に将来値が上がると聞かされて、つい買ってしまったのでしょうか。

まさに負の遺産です。

 

売れる土地ならまだしも、誰も欲しがらないような土地の場合、こんな土地はいらない、相続放棄したい、と思うのは当然です。

しかし、相続放棄はそう簡単にできるものではありません。「この土地だけを相続放棄する」というのは制度上不可能なのです。

相続放棄というのは、すべての財産の相続を放棄するということです。つまり、相続人の権利を放棄するということになります。

 

そして相続放棄した場合、相続財産は別の相続人が相続することになります。例えば、親一人子一人で相続人は自分だけ、と思っていても、自分が相続放棄することにより、その遺産は第二順位である祖父母、又は第三順位である親の兄弟が相続人となります。後でトラブルにならないためにも、すべての相続人になる可能性のある人と話し合う必要があります。

(相続人の全員が相続放棄した場合は、相続財産清算人により国庫に帰属されます)

 

相続放棄が現実的な手段ではないのであれば、一旦相続してから売却するのが一番ですが、どうしても売れそうにない場合はどうしたらよいでしょうか。

 

その場合の手段の1つとして、2023年4月27日より法務省で始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法もあります。

この制度は、利用されていない土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するために、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。

 

しかしこの制度、デメリットがいくつかあります。

まず、認められない条件がたくさんあります。例えば、建物がある場合は無条件に認められません。

また申請するだけでも審査手数料がかかり、審査のために土地の図面や写真などの提出も必要になってきます。

承認されたとしても10年分の管理費にあたる負担金を支払わなくてはなりません。

負担金を支払って初めて、その土地はやっと国のものになるという仕組みです。

それでも、2024年からは相続の登記が義務化されていますし、管理や固定資産税などの煩わしさを考えると有効な手段と言えるでしょう。

 

このように、いざ相続が発生してから急いで土地の売却や処分を考えると、短い期間に決着をつけようと焦るあまり、損をしてしまうことも少なくありません。

必要のない土地を所有してお困りの方は、早めに専門家に相談して、生前対策を考えることをお勧めいたします。

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